改良メダカの命名権について ~命名は販売時ではなく作出時としている理由~

スタッフブログ

めだかの館は新品種をどうやって名付けて販売しているの?というご質問をいただきました。

改良メダカは毎年多くの新品種が作出(さくしゅつ)されていますが、そのルールや流れは
メダカ店が各々決めているのが現状です。

前の記事では、めだかの館での新品種作出と命名の流れについて紹介しました。

本記事では、前記事では説明できなかった内容「命名は販売時ではなく作出時としている理由」について記載します。

本記事によって、皆様のメダカライフがより豊かになる一助となれば幸いです。

こんな人にオススメの記事です!
  • メダカの命名ルールってどうなってるの?
  • めだかの館の販売しているメダカの命名ルールが知りたい

改良メダカの新品種を命名する際の流れとルール

前記事の復習。です新品種を作出する際の流れをスライドにまとめました。

要点をまとめますと

 ・命名には業界共通ルールがないため、各店で命名ルールを決めている
 ・めだかの館では「作出」時に命名している
 ・命名前には調査を実施し、同じ名前がないことを確認している

の3つです。

よくある質問として「改良メダカの命名は販売時が一般的かと思いますが、なぜめだかの館は作出時にしているんですか?」というものがあります。

本記事では、めだかの館が作出時に命名している理由と、販売時に命名することによるデメリットについて紹介します。

命名権は販売時ではなく作出時にある方が良いと考える理由

まず、当店がなぜ販売時ではなく作出時に命名権があると考えるのか、お伝えします。

理由1 販売をしていない愛好家の新品種作出をサポートするため

ここでは、「命名権は作出時ではなく販売時にあるべきだ」ということを「販売=新品種作出=命名権」と表現します。「販売=新品種作出=命名権」とした際の問題は、販売を実施していない愛好家(=販売未実施の愛好家)は命名権を得られない、もしくは命名権を得られるチャンスが販売実施者より少なくなる、という点です。

販売時に命名権がある時の問題点1(デメリット)

  • 販売を実施していない愛好家(=販売未実施の愛好家)は命名権を得られない
  • 命名権を得られるチャンスが販売実施者より少なくなる

 

改良メダカの魅力の一つに、プロ(ショップ)ではなくアマチュアが新品種を作出できる可能性がある、というものがあります。

当店は、これまでに販売をしていないけれども素晴らしい新品種を作出する愛好家をたくさん見てきました。

例えば、販売未実施の愛好家と販売実施者であるプロが、偶然にも同時期に同じ特徴のメダカを作出したとします(進歩の目覚ましい改良メダカ界では珍しくないことで、過去にも同様の事例はあります)。

その際、普及という点からどうしても販売実施者であるプロの方が有利となり、販売未実施者の愛好家のメダカは、普及がプロよりも進まず、偽物であると揶揄されたり、最悪の場合なかったことにされます。

プロとアマが、偶然にも同時期に新品種を作出した場合、普及という点ではアマの方が不利である。

当店としては、自分たちの目で確認して新品種であると認めたメダカ(=皆様に自信をもって紹介できると判断できるメダカ)については、販売の実施に関係なく(大きなプロショップでも、無名の愛好家でも、分け隔てなく)、同列にメダカの普及を応援し、記録として残したいと考えております。

その際に、当店がそのメダカを取り扱ってているか(販売しているか)、は関係ありません。好き嫌い等も、当然関係ありません。

改良メダカをつくる苦労や命名の際にかける想いは十分に理解しているため、特に不利になりやすい販売未実施の愛好家のサポートをしたいと考えています。

 

また、販売実施者、販売未実施者どちらも平等に作出のチャンスが与えられるためには、販売時ではなく作出時に命名権があるべきだと考えます。

作出時に命名権があるのであれは、販売未実施者でも自らのSNSなどで作出の情報発信は可能であるため、販売実施者と同様に作出を世に訴えることができます。

 

もちろんフォロワー数の違いなどで、多くの人に見られるかどうかの違いはあります。

そこで当店は、情報発信のサポートとして、販売未実施者のメダカをホームページやSNS,出版する書籍で紹介することで、販売未実施者が作出したメダカを多くの人に見ていただくよう支援しています。

めだかの館の考え
  • どなたでも平等に新品種作出ができるよう、特に不利になりやすい販売未実施の愛好家をサポートしたい
  • そのためには、販売時ではなく作出時に命名権がある方が良い
  • めだかの館は販売未実施者のメダカ情報発信を応援したい

 

また、少し話がそれますが、販売実施者同士においても、情報発信力に違いがあるため、大手の販売実施者の方が新品種作出において有利という意見も耳にします。販売競争である以上、大手が情報発信において有利であることは間違いありません。当店としては、新品種作出が公平に行われるよう、大手でも中小の販売実施者でも、分け隔てなく新品種作出の情報発信を応援するよう心がけています。

まとめますと、「販売=新品種作出=命名権」とすることは、新品種作出において販売実施者が有利となるため、公平性を期すために作出時に命名権があるべきだ、と考えています。

よう吉
公平性を期すため、めだかの館では作出時に命名権があるべきとかんがえています

理由2 販売先行主義を排除することで改良メダカの低質化を防ぐため

「販売=新品種作出=命名権」とした際の問題は、先に販売したもの勝ちとなるため、固定率などメダカの質が低い状態での販売開始を助長しまう恐れがあることです。

販売時に命名権がある時の問題点2(デメリット)

  • 販売先行主義となり、固定率の低いメダカばかりが販売されるようになる可能性がある
  • むやみに名前だけが増え、改良メダカ愛好家を混乱させる可能性がある
  • 新品種のもととなる新しい特徴を持つメダカの発見(交配の結果生まれたものも含む)から、固定化までは少なくとも数世代の交配や累代飼育が必要になります。少なくとも、固定のされていないF1を新品種と呼ぶことはできません。

    「販売=新品種作出=命名権」がルールであれば、F1で新しい特徴が出たメダカを新品種として謳い、販売する行為が多発する可能性があると考えます。

    実際に、F1を新品種と謳い、オリジナルネームを付けて販売している事例はたくさんあります。

    そのような固定率の低いメダカは、販売当初は話題性で売れることはあっても、次世代にも特徴が受け継がれず、いずれは売れなくなり、結果として品種として普及しない、と考えます。淘汰されて自然消滅する、ということです。

     

    改良メダカが今後も発展するためには、高品質(きれいな特徴で、固定率が高い)なメダカを、愛好家の皆さまが作出することが必要です。

    そのためには、命名権を得るため販売を急ぐようなルールは好ましくないと考えます。命名権は販売時ではなく作出時とすることで、新しいメダカを発見しても焦って販売することなく、まずは情報発信して作出を世に発表する、その後じっくりと固定化を進めて、満を持して販売をする、というルールが望ましいと考えています。

    よう吉
    高品質なメダカをじっくりと作出してほしいため、めだかの館では作出時に命名権があるべきとかんがえています

     

    先に述べた通り、業界ルールはないため、これはあくまでめだかの館の命名権の基準です。

    しかし、改良メダカ界に20年以上携わってきた当店としては、平等かつ改良メダカの発展のためには、販売=新品種作出=命名権ではないほうが良い、と考えています。

    事例紹介 2つのピンクサファイアの名前について

    改良メダカの命名権がいつあるのか、について各店ごとにルールが異なる結果、どちらに命名権があるのか、という問題が生じることがあります。

    事例の一つとして、2022年7月に和田敏拓氏が作出したピンクサファイアについて紹介します。詳細はこちらをご覧ください。

    当店の結論としては、(和田氏の作出した)館ピンクサファイアを販売して情報発信を続けてまいりますが、(A様の作出した)Aピンクサファイアの普及についても応援をする、というスタンスです。

     

    館ピンクサファイアの名前を変更しないのか

    「館ピンクサファイアの名前を変更しないのか」については、特にAピンクサファイアをすでに購入した愛好家様であれは、希望として当然のことかと思います。

    Aピンクサファイアをすでに購入した愛好家様からは納得がいかないかもしれませんが、当店としてできることは

    • Aピンクサファイアの普及を応援すること(Aピンクサファイアの命名変更や販売停止を要望しない)
    • ピンクサファイアは同時期に作出された2つの系統(タイプや種類とも言えます)があると整理すること

    であると考えます。

    どちらが本物、本家、ではなく、どちらも本物、本家、というスタンスです。

    2つの系統を認めるということは、めだかの館にとっても譲歩のスタンスであることをご理解いただければと思います。

    なぜなら、当店としては館ピンクサファイアを作出した和田氏の努力や思いを大切にしたいからです。

    上記理由とは別に、「ピンクサファイア」という名称が完全オリジナルネームではなく慣用的なメダカ名であることがありますが、このことは別の記事で説明予定です。

    名前論争に巻き込まれるとメダカが嫌になってやめてしまう

    今回、様々なご意見が出ており、心を痛めたメダカ愛好家がいらっしゃったのであれば、とても残念に思います。

    ルールがなく、発展途上の改良メダカ界においてはこのようなことが過去にも発生しており、大変残念なことに、このような問題を機に優秀なメダカ愛好家がメダカ飼育を辞めてしまう、ということもありました。

    改良メダカ界にとっての損失とは何でしょう?

    飼育人口の減少はもちろんですが、改良メダカ界の発展をけん引している「新品種を作出できるブリーダー(メダカをつくる人)」が辞めてしまうことではないでしょうか。

    新品種をつくるたびに、このような論争が起こるのであれば、モチベーションが下がってしまうことは目に見えて明らかです。

    当店としてできることは、このような問題が発生した時に、当事者同士が早期にコンタクトをとり、お互いに敬意を表しつつ議論を重ね、落としどころを探し、事態の収拾を図ることだと考えています。

    ルールがない以上、当事者同士の敬意のある議論以外に解決方法はないように思います。

    そのような状況は当然好ましいとも思えませんので、当店としては改良メダカ界のルール作りに取り組んでいる状況です。

    改良メダカ界にとっての損失

    優秀なメダカ愛好家が、名前論争などに巻き込まれて辞めてしまうこと

    よう吉
    メダカ愛好家が辞めないため、公平性のある業界ルールづくりの提案に取り組んでいます

    作出者から希望があれば、情報発信をしない

    「めだかの館の運営する「改良メダカweb図鑑」のピンクサファイアのページでは、作出者は和田氏のみになっていて、A氏の名前がない。これはAピンクサファイアを認めていないということか」

    というご意見をいただきました。

    上記のとおり、当店としてはAピンクサファイアも館ピンクサファイア同様に普及を応援したいと考えております。

    一方で、A様にピンクサファイアの作出者として名前を挙げることを提案した際に、A様から辞退があったため、当該ページではA様のお名前を掲載しておりません。

    ご本人様の希望を尊重したいと考え、今後も当店の発信する情報において、A様のお名前を掲載する予定はありません。

    繰り返しになりますが、ピンクサファイアは和田氏とA氏の作出であると考えており、できることは少ないですが、当店はこれからもAピンクサファイアの普及を応援しています。

    ピンクサファイアに関するまとめ

    2つのピンクサファイアについて、当店の考えを説明させていただきました。

    冒頭にもある通り、当店の考えは

    • どちらが先に作出したかは各店で基準が異なるため単純に比較できず、双方納得できる結論は出ない
    • 当店の基準に照らすと、当店がピンクサファイアを作出したときに同名の調査をした結果、使用されていないことを確認したうえで命名しているため、当店のピンクサファイアの名前を変更する必要はないと考えている。
    • 当店としては、A様のピンクサファイアの名前を変更は希望しておらず、A様のピンクサファイアの普及を応援している

    です。

    ご理解いただけない部分があることは承知ですが、今後同様の問題が生じないよう、

    • 当店の情報発信をより分かりやすいものにする
    • 業界ルールづくりに力をそそぐ

    ことに努めたいと思います。

    まとめ

    いかがだったでしょうか。

    めだかの館の考えをまとめますと

    • 作出時に命名権があるべきと考える理由は、1。公平性を期すため、2。高品質なメダカをじっくりと作出してほしいため、の2つ
    • 当店ルールだけでなく、業界全体のルールが必要である
    • 引き続き、わかりやすい情報発信に努める

    です。

    改良メダカ愛好家のためにも、業界の発展のためにも、改良メダカweb図鑑では、引き続きわかりやすい情報発信を続けてまいります。

     

    もし、これらのことで、聞いてみたいこと、発信してほしいことがあれば気軽にご連絡をください。

     

    • メール medakanoyakata2000★gmail.com (★を@に変更ください。返信に時間がかかる場合があります)
    • 電話 0829-39-4711(9:00~17:00、火曜以外)

     

    皆様のメダカライフがより豊かになりますように。