改良メダカの 放流禁止について 2023.3.21備忘録 「中池見のキタノメダカがピンチ! 私たちにできることは?」

スタッフブログ

改良メダカの放流禁止問題について、2023年3月21日開催の「中池見湿地の今をシェア!
子ども も おとなもみんなで報告会」に参加しましたので、備忘録として内容をまとめます。

 

目次

改良メダカの放流禁止問題とは?

古来より日本に生息しているメダカを「野生メダカ」、野生メダカをヒトが観賞用に品種改良したメダカを「改良メダカ」と区別しています。

改良メダカの放流禁止問題とは、通常は野生に存在しない改良メダカがヒトの手によって自然に放流されることで、遺伝子汚染などが生じる問題を指し、近年報告件数が増え話題となっています。

 

 

改良メダカweb図鑑としてできること

当店は、改良メダカの放流禁止問題に取り組むべく、2020年に「改良メダカの放流禁止を考える会」の立ち上げを行うなど、自分たちにできることを進めてきました。

 

 

改良メダカの情報発信をする本サイトでも、この問題を取り上げることで少しでも正しい情報発信や啓発の一助になればと考えています。

この度参加したパネルディスカッションについて

2023年3月21日に、NPO法人中池見ねっと様が主催する「中池見湿地の今をシェア!子ども も おとなもみんなで報告会」に参加し、その中のパネルディスカッション「中池見のキタノメダカがピンチ! 私たちにできることは?」にパネリストとして参加しました。

中池見ねっと とは?

福井県敦賀市にある中池見湿地の生態系を守る活動を行っているNPO団体です。

中池見ねっとは市民の皆さんと共に、ラムサール条約湿地である中池見湿地の健全で豊かな生態系を守り、中池見湿地を地域の生物多様性保全の象徴的な空間として、未来を生きる子どもたちに残していくことを活動の目的としています。

出典 中池見ネットホームページ(https://nakaikeminet.raindrop.jp/nakaikemi-net/

今回は、「メダカ」という共通のテーマで、パネルディスカッションへご参加させていただきました。

どんな方が参加したのか?

研究者、保全活動の実施者、そして改良メダカの販売業者からそれぞれパネリストを選び、議論を行いました。

パネリスト

  • 北川 忠生 (近畿大学農学部)
  • 成瀬 清 (基礎生物学研究所バイオリソース研究室)
  • 大場 貴保 (改良メダカの放流禁止を考える会事務局)
  • 深町 昌司 (日本女子大学 理学部 化学生命科学科)
  • 伊藤 玄 (龍谷大学生物多様性科学研究センター)
  • 藤野 勇馬 (中池見ねっと)

 

コーディネーター

  • 野一色麻人(中池見ねっと)

 

パネルディスカッションの内容について

どのような内容を話したか、備忘録として本記事に残そうと思います。正式な議事録ではありませんので、ご了承くださいませ。

はじめに

(野一色さん)

会場に20数名、オンラインで40名以上の参加で、本問題への関心の高さがうかがえます。

キタノメダカについての簡単な現状報告

(野一色さん)

キタノメダカは、生息環境の消失、オオクチバスやブルーギルのような国外外来種による捕食により大幅減少した。

ミナミメダカや改良メダカによる遺伝子汚染が懸念されている。

改良メダカの放流が「第三の外来種」として問題になっている。

そこで、キタノメダカ系統保全緊急対策チームを結成した。メンバーは、保全団体(中池見ねっと)、研究者(近畿大学、龍谷大学、基礎生物研究所、日本女子大学)、販売業者(改良メダカの放流禁止を考える会)、敦賀市。

パネリストの自己紹介

 

キタノメダカとは

(北川先生)

メダカは、遺伝学的研究が進みにつれて、実は遺伝的に異なる2つのグループに分かれることが分かった。2011年の論文。

画像は上がキタノメダカ、下がミナミメダカ。

画像引用 Asai T., Senou H. and Hosoya K.(2011)Oryzias sakaizumii, a new ricefish from northern Japan(Teleostei: Adrianichthyidae), Ichthyol. Explor. Freshwaters 22(4), 289-299

両者の違いの例は、下記の通り。群れ行動にも違いあり。
キタノメダカは、鱗の格子がはっきりしている。銀鱗がおおくある
ミナミメダカは、背ビレの切れ込みが深い。尾ビレの付け根に2つの濃い点がある。

新種を認めるときに、典型的なモノ(模式標本)を決める必要がある。そして、中池見湿地の個体が、キタノメダカ(Oryzias sakaizumii)の模式標本となった。

模式標本の産地(模式産地)に選ばれるには、種が安定して生息していることが大切。中池見は、「地形的に隔離」「環境が良い」そして「環境を守っている人がいる」ことで選ばれた。

キタノメダカ、ミナミメダカ、改良メダカ、それぞれのメダカの違いをまずは認識することが重要。

中池見に改良メダカが放流されたエピソード

(藤野さん)

昨年の秋に中池見湿原の泉(?)で、体色が野生と異なるメダカを発見し、水中で写真撮影した。

後日、学会で伊藤玄先生の改良メダカに関する講演を聞き、特徴が合致していたため、伊藤先生に相談。写真のメダカは少なくとも、野生メダカではないことがわかった。

その後、件の個体を探したが、現在までみつかっていない。

改良メダカの判別ポイント

(野一色さん)

この見つかったメダカについて、「突然変異を起こしたメダカがたまたまいたのでは」という意見もある。業者として、改良メダカを見分けるポイントはありますか・

(大場貴保)

改良メダカは野生メダカの突然変異から作成した。他の種(Oryzias latipes以外)と交雑していない。突然変異同士を選別して、特徴を強化してきた。

よって、自然種の中で(今市場に流通しているような、特徴が強化されたメダカが)偶然出ることはないのかな、と考えている。いまのメダカは自然種とかけ離れている。

改良メダカ

改良メダカと野生メダカが交配したらどうなる?

(北川先生)

改良メダカは自然界では生きにくいもの。こういうものを表現型として残すのは難しい。

多くは交配すると表現型は見えなくなる。普通のメダカのようにふるまう。

しかし遺伝子は次の世代に残してしまうことになる。

遺伝子組み換えメダカと改良メダカの違いは?

(野一色さん)

先日、遺伝子組み換えメダカが話題になった。改良メダカと遺伝子組み換えメダカの違いはありますか?

(大場貴保)

販売業者では傾向メダカは認知されている。

両者の違いは、業者であれば目視でわかります

しかし、改良メダカの進化が目まぐるしいため、初めて飼育する人からすれば、遺伝子組み換えメダカをみて「これが最新の改良メダカか」と間違うこともあると思う。それほどに、改良メダカは進化している。

学術的な違いは述べることが出来ないが、少なくとも業者であれば目視で両者の違いがはっきり分かります。

(成瀬先生)

遺伝子組み換えとは、本来メダカが持っていない遺伝子を入れること。サンゴの遺伝子で赤くしている。

改良メダカはメダカの持っている遺伝子の中で、(遺伝子が)違っているものを組み合わせてきれいなものを選んでいる。育種である。ブタとイノシシと同じ関係。両方とも同じ種。野生メダカがイノシシで、改良メダカはブタ、と同じ。

楊貴妃は本来持っている遺伝子に赤くする要素がある、蛍光メダカは他の遺伝子によって赤くしている。

また、改良メダカとは異なり、遺伝子組み換え生物は、普通の人は買ってはいけない。

改良メダカは、うしろに生き物の神秘が隠れ居ている。遺伝子組み換え生物は神秘はない。科学的な機構がある。

キレイな色の表現(目高)でも、両者は全くちがうものである。

蛍光メダカの写真

画像出典 環境省HP(https://www.env.go.jp/content/000116921.png)

楊貴妃メダカ(改良メダカ)

楊貴妃メダカ(改良メダカ)

カメラによる定点観測で改良メダカの発見は可能か?

(深町先生)

(パネルディスカッション前の口演の内容も踏まえて発言)現在のところ見つけたことはない。また、どこまで検出可能かはわからない。定点観測でフナとメダカの違いはわかるので、もしかしたか可能かも。

(成瀬先生)

もし中池見で、ドローンで頻繁に改良メダカが観測されるようになったら、それはかなり問題である。

環境DNA調査結果から、中池見の改良メダカの状況について

(伊藤先生)

環境DNAは水に漂う生き物由来のDNAを検出する技術。水を汲めば生息している生き物がわかる。採取よりも高感度に生き物の有無がわかる技術。

藤野さんから話があり1週間後に採水実施。

環境DNAの検査方法は、採取した水をろ過して、PCRでDNAを増幅して、改良メダカの遺伝子が検出されるか、というもの。

改良メダカはミナミメダカの遺伝子が入っており、中池見はキタノメダカしか生息していないため、ミナミメダカの遺伝子が検出されるかで、改良メダカによる遺伝子汚染が検出できる、と調査。

結果、中池見は「キタノメダカしかいない」。ミナミメダカの遺伝子は検出されなかった。

(野一色さん)

今回、少なくとも、中池見に多くの改良メダカがいる状態ではない、ということで少し安心した。

保全フィールドで改良メダカを見つけた時に、まず何をすればよいか?

(北川先生)

遺伝的かく乱は目に見えない。見えるもの(改良メダカの特徴が表現されているメダカ)は淘汰される。よって、見えた時(発見した時)に行動しないといけない。

いまできることは 「これ以上入れない」こと。

「保険として(環境が守れなかった時の最終手段として)」、大丈夫な時に安全な隔離した系統保存をする ことも重要。

(野一色さん)

系統保存をしたらそれで、中池見のメダカは守られるのか?

(成瀬先生)

系統保存は、その地域で生息できなくなったときの最終手段。守るべきは生体だけでなく環境。

敦賀市民を守る というときに 市民一人の遺伝子を保存すればいいのか という話、と同じ。

域外保存(いきがいほぞん)はそういうこと。外から生き物をいれない、それが重要。

(北川先生)

見つかったら、交配したと考える。その個体群をそこに隔離しておく。そして、専門家に相談する。

壇上のメンバーに相談すれば、どこか紹介できると思う。

(藤野さん)

最初に採取すべきだった、と今は感じている。違和感を感じたら採取して下さい。

また、博物館などの詳しい人に相談してみてください。または中池見ネットワークに相談ください。

改良メダカを放流することが問題 と言われるが、何が問題なのか?

(野一色さん)

第三の外来種として全国的な問題に。放たれるとなにがおこるのか?

(北川先生)

外来種というと外国産をイメージするがそうではない。国内外来種、という概念。生き物に国境はない。

  • 第一の外来種の概念 = 国境を越えてきた
  • 第二の外来種の概念 = 生き物を超えてきた
  • 第三の外来種 = 生き物を使いやすいようヒトが利用している生き物も外来種

第三の外来種の問題は、原種を選抜して好む形に変えてしまったものを自然に返すことがいいことなのか?自然界の生き物にとっていいこと?それはよくないことである。

ヒトに必要な特徴だけを選んでいる。それは、ヒトの範囲でしか使ってはいけない。生き物のふるまいを変化させてしまうことになる。

改良メダカの放流は全国でどのくらい行われているのか?

(野一色さん)

伊藤先生の論文で、愛知、岐阜の事例があるが、ほかの都道府県でも事例があるのか?

愛知県の水路から得られたヒカリメダカ等の観賞魚メダカ

岐阜県の野外水域における体外光メダカ(幹之メダカ)などの観賞魚メダカの標本にもとづく初記録

(伊藤先生)

岐阜の論文投稿後、メディアに取り上げられたこともあり反響があった。改良メダカをみつけた、という意見もいただいた。

論文、学会発表など組み合わせると、「15の都府県」で改良メダカの放流の報告があった

これはあくまで報告された数に過ぎなく、47都道府県で報告されても驚きはしない。

放流されている改良メダカの特徴に傾向はあるのか?

(伊藤先生)

色が青、白、という昔からの色が多い。観賞用メダカ界では、青、白はポピュラー(価格が低い)なものだと認識している

他にも、骨曲がり、色が薄い、など、業界で「ハネ(選別漏れ)」といわれるものが見つかっている気がしている。

どのような心理で改良メダカを自然に放流しているのか?

(野一色さん)

この問題に触れるには、放流する人の心理にも触れないといけないです。

メダカ愛好家では、メダカが増えすぎて困る、という話がある。どうしたらいいのか?という質問もいただいた。改良メダカ業界ではどのようなアプローチをしているのですか。

(大場貴保)

改良メダカも野生メダカ同様、簡単に増える。

多くの愛好家は放流してはいけない、を理解している、と感じている。一方で、一部の心無い人が放流をしていると感じている。

愛好家から増えて困っている相談を受けた時は「当店で引き取ります。その代わり、(例えば大型魚の)エサにします」と伝えます。すると「エサにされるなら、やはり自分で育てます」と断る人もいます。メダカ愛好家の多くはメダカを大切にしていると感じます。

そのような方には、殖やさない方法を教えます。卵を隔離しない(親と同じ水槽に入れる)。

そのようにすれば、その代で終わる。メダカは短命なので、寿命は2年くらい。

 

(成瀬先生)

(放流されているのは)改良メダカといわれているが、実際は、ヒメダカの事例が多い。40%くらいはヒメダカである。

ヒメダカ放流の原因は学校です。小学校5年生の授業で取り扱う。その後、教室で増やす。飼育のうまい子が増やしてしまう。水槽がこみこみになる。子供はかわいそうだから田んぼに放す、がありそうなストーリー。

なので、学校の先生に(放流してはいけないことを)伝えることが重要だと考える。

飼育しているもの(ヒメダカ)は野生のものと違う、ということ。

飼育はエサを与えて増えるが、自然界ではそうではない、ということ。

飼育で獲得したものが野生メダカに入ってしまうことは、長きにわたってもつないできた遺伝子を壊すことになる、ということ。

「かわいそうだから」で、片づけていい問題ではない。

善意で改良メダカを自然界に放流している、ということはあり得るか?

(北川先生)

あると思います。

命を大切にしたい。地域にメダカを取り戻したい。そういう間違った善意から話しているケースがほとんどだと思う。

善意の放流をする人と、保全団体のマッチングに必要なことは?

(北川先生)

今日のような機会。

広く社会に伝えることが、マイルドだが本質的に解決する。

ただ時間がかかる。その時間を解決する方法も考えないといけない。

販売業者として、愛好家に改良メダカの放流禁止を伝える上で知りたいことは?

(大場貴保)

「改良メダカの放流禁止」は、愛好家に近い、販売業者がすべき、と思っている。

物理的に放流することは呼び掛けることが出来るが、無意識に放流している可能性を感じている。

具体的には、卵が下水道に流れているのでは、と思っている。他の魚類で事例があれば教えていただきたい。飼育販売業者に(専用の対策グッズを)提案ができるかもしれない。

(成瀬先生)

組替体が外に流出しように、というトラップシステムのことですね。研究者はそれをしている。

東京の下水道で卵が孵化して大きくなる、ということは、ほぼほぼない。と思いますが、100%ではない以上対策が必要。

一番いいのは排水前に塩素処理をすること。排水をためて、ハイターで1時間処理。それで卵は死ぬ。

大量の水で無理であるなら、1mm(卵の大きさ)の網を通す。卵には毛がついているのでこれでトラップできる。

そのような対策を実施しており、研究室15年で一度も流出の事例はない。

改良メダカの放流をする人はどんな人か?法規制は必要か?

(野一色さん)

金魚の事例などからも、業者が悪いこととわかっていて、廃棄目的で放流、もいるのではないか。

現在は、規制する法律もないが、法改正など必要なのか、と考えている。この議論はどう進めていけばよいでしょうか。

(北川先生)

アメリカザリガニの発表。特定外来生物、の枠組みとして考える。

従来はブラックバスなど、影響力の大きい生物が対象だった。昨年改正 で 取って飼うことは禁止 飼っているものは(禁止にして放したらいけないので)そのままでOK と変更した。

生き物によって対応を変えた。

かってももよい 売ってもよい でも放してはいけない など。

このように議論することで世の中の認識が変化するかもしれないので、大切。

今回のパネルディスカッションもその契機になるのかな、と。

(野一色さん)

どういう関係者と話していくべきでしょうか?研究者、業者、保全するひと、など。

(成瀬先生)

まずは学校教育です。環境教育。ヒトが飼育している。ドメスティケーション。なにがおこるか。だいぶわかってきている。

まずは子供とその親に伝える。それと共に、北川先生の情報を出す、ということ。

その上で、次になにをすべきかかんがえれば。今回はその第一歩になっているのではないか、と。

パネラーの感想

(北川先生)

この場ができるようになったことは素晴らしいこと。

10年前の調査時、40%にヒメダカの遺伝子が入っているという論文を執筆したが、棄却された。

結果通ったが、当時は研究者ですらその情報に価値をなかなかみてなかった。

今回は多くの人が集まった。問題意識が高まっていることを感じる。

わからないことは聞いて、情報を広げる取り組みをしていただければ。

(深町先生)

勉強になりました。不要なメダカはたべさせている。愛好家は嫌がる、という話は勉強になった。

放流=いいこと感がありますが、結局「廃棄」である。それはダメでしょう。廃棄であるという認識が欲しいです。

(成瀬先生)

ちゃんと勉強することが大切です。

(伊藤先生)

私は、ただの魚マニア。改良メダカで楊貴妃、銀河などを飼育していた。この改良メダカの文化は守っていきたい。発展してほい。放流廃棄が良くない、ことが伝われば。

(大場貴保)

改良メダカ愛好家の愛を感じている。今回自然保護の方の意見を聞くことができました。両者の繋ぎ役になれたら、と感じています。

(藤野さん)

保全の立場は、飼育者と会う機会はほとんどない。こういう場で話すこと、重要。善意で起こっている問題かもしれない。

市民への啓発、教育、が重要。市民に近いのは保全の立場、業者なのかもしれない。時間は足りないが、取り組んでいきたい。

質疑応答

  • このような議論の場に土木関係者を入れた方が良いのでは?
  • 野生メダカの研究者を大学でもっと増やした方が良い(ヒメダカをモデルとして扱う研究者は数百人いても、野生メダカの研究者は20人程度)
  • メダカのブリーダー資格をつくってはいかがでしょう?

おわりに

いかがだったでしょうか?

改良メダカの放流問題は、今後改良メダカ界にとって大きな問題となるかと思います。

今日のような議論の場に参加させていただき、様々な方と手を取り合って解決に向け行動をしていきたいと考えています。

時間も限られていることから、まずは行動をすることが大切だと感じています。

様々なご意見もお待ちしています。

皆様と一緒に、100年後もメダカが楽しめるよう、がんばりたいですね!